犬島家プロジェクトとは
犬島家プロジェクトは島の集落再生を目的としたアートプロジェクトで、島の風景と共に作品をめぐる一連の体験テーマを「日常の延長にある桃源郷」として瀬戸内国際芸術祭の第一回開催年である2010年に岡山県犬島で一般公開されました。
犬島アートプロジェクトの「F邸」「S邸」などの名称は古民家の家主のイニシャルが由来となっています。
F邸「山の神と電飾ヒノマルと両翼の鏡の坪庭/柳幸典」
S邸「蜘蛛の網の庭/柳幸典」
I邸「眼のある花畑/柳幸典」
今とは展示されている作品も家プロジェクトの数も違うんだね。
鑑賞料金
犬島家プロジェクトのチケットは犬島精錬所美術館との共通チケットで2,100円(15歳以下無料)です。
チケットは共有チケットのみですので、家プロジェクトだけのチケット販売などは現在ありません。
休館日
■休館日
12月~2月は全日休館&3月~11月は火曜、水曜、木曜のみ休館(※祝日の場合は開館)です。
(※3年に一度開催される瀬戸内国際芸術祭の期間中はこれに限らず開館しています。)
作品のメンテナンスなど様々な理由で変更になる可能性もあるので公式の開館カレンダーも確認してみることがおススメです!
3月~11月の金土日月が基本的な開館日だね!
家プロジェクトの作品
F邸
作品:F邸/Biota(Fauna/Flora)
作家:名和 晃平
公開:2013年
作品名の”Biota”には生物相という意味があります。
F邸のすぐ西隣には犬島が採石場として盛んだったころに石職人の安全祈願の為に建てられた神社があり、そこから溢れる霊気をエネルギーとして新たな生物がF邸に誕生しているというストーリーがあるそうです。
中央広間の作品は発砲ポリウレタンが素材に使われているよ!
北側の坪庭にはFauna(動物相)という”動くことを選んだ生物”の作品が広がっています。
中央の人型の作品は、作家の名和晃平さんの知人である”れん君”という子供がモデルになっており、
2013年に作品が公開され、その3年後である2016年にはモデルのれん君の成長に合わせて少し大きくなった姿で再制作されています。
南側の坪庭にはFlora(植物相)という”動かないことを選択した生物”の作品が広がっています。
植物や海藻のようにもみえる作品には”マジョーラ”と呼ばれる自動車やプラモデルに使用される塗料が使われており、光源や見る人の位置により色の見え方が変化することが特徴的です。
角度を変えて作品を見てみると色の変化にビックリするよ!
S邸
作品:S邸/コンタクトレンズ
作家:荒神 明香
公開:2013年3月20日
S邸はアクリルのみを素材として制作され、柱の無い非常に珍しい建造物です。
その特性から耐震性を兼ね備えることに苦労されたそうですが、建物の曲線を活かして素材であるアクリルの厚みを正確に計算することで建築家、妹島和世により設計されました。
透明なアクリルの壁の中には大きさや焦点距離の異なる約4,000枚のレンズが吊るされており、レンズ越しに見る景色は形や大きさを変えて目に映りこみます。
これは作家の荒神明香が高速バスで移動している際に「車窓の景色が次々に映り変わることから自分の目が疑わしくなった。」という経験から着想を得た作品だそうです。
また、レンズの中には上下が逆さに見えるレンズもあるので周りの景色や人が上限反転して映ります。
雨の日には雨粒が空に上がるように映ることもあるよ♪
S邸は瀬戸内国際芸術祭のはじまった2010年には柳幸典による”蜘蛛の網の庭”が展示されていましたが、瀬戸内国際芸術祭の第2回が開催された2013年からは荒神明香による”コンタクトレンズ”が展示されています。
”コンタクトレンズ”は東京都現代美術館などの屋内で何度か展示されていましたが、東京での展示はアクリルの壁もなく屋外での展示は犬島が初めてとなり周囲の景色と共生できるようコンタクトレンズのサイズや配置にこだわり制作されています。
A邸
作品;A邸/Yellow Flower Dream
作家:ベアトリス・ミリャーゼス
公開:2018年
A邸は家プロジェクト制作の際に建物の老朽化が進行していた為、新たにアクリルで設計されたリング状の建築物です。
リング状の内部には様々な模様のシートが貼られた17枚のガラス板で仕切られています。
建築内に入ると中央にはベンチが設置され、作品と共に犬島の風景を眺めることができるようになっています。
作家ベアトリス・ミリャーゼスはA邸に展示する作品を制作するにあたり2017年に犬島に初来島。
「A邸の周囲にあるお花の色を作品に取り込み、それぞれの絵の構成を決めました」とも語っています。
A邸が初めて公開された2013年~2018年までの約5年間は現在の「Yellow Flower Dream」ではなく、”荒神 明香”(S邸/コンタクトレンズの作家)さんによる「リフレクトゥ」が展示されていました。
A邸のある場所には昔、石屋の親方さんが住んでいたらしいよ。
C邸
※作家の意向により写真撮影不可の為BASN参照
作品:C邸/無題
作家:半田 真規
公開:2019年
C邸は築200年以上の建物ですが、梁と瓦は当時のものを使いつつ一度リノベーションされています。
リノベーションの際に梁などは一度解体され、磨かれた後に当時とは別の組み立て方で活用されています。
C邸には大きな木彫の作品がいくつも展示されています。
これらは楠の木彫り作品で、犬島に咲く花を作家、半田 真規さんが制作したものです。
木彫りの作品は「水仙の花と葉」「ムクゲ」「桜」「椿」「水仙の花や葉」など非常に多くの作品があるので、C邸の庭や犬島を散策しながら同じ植物を探してみるのも楽しめるかもしれませんね。
C邸は集会所や犬島小学校の教員住宅などとしても使われていたよ♪
I邸
作品:I邸/Self-loop
作家:オラファー・エリアソン
公開:2016年
I邸には向かい合うように設置された3つの鏡とビューファインダー(丸い輪)があります。
作家のオラファー・エリアソンはI邸に展示する作品の制作の為、I邸に初めて訪れた際に手前と奥の部屋の境目に鏡があるように感じたそうで、そのことから鏡を用いた作品を制作しました。
また、”Self-loop”について「見ること、見られる事を考えさせるもの」とも語っており「鏡を見ている人が、鏡を見ている自分を背後から見ている」という状況を作り出しています。
ビューファインダー(リング)から鏡を覗いてみてね!
石職人の家跡
作品:石職人の家跡/太古の声を聴くように、昨日の声を聴く
作家:淺井 裕介
公開:2013年
犬島で採石業が盛んだった頃に石職人の親方が弟子を住まわせていた家があった場所に生命力溢れる動植物が描かれています。犬島で見つけられた石や民家の梁が設置され、切り絵のように貼り付けられた絵の中には島民が参加して描いたものも含まれています。
作品は石職人の家跡の敷地だけに留まらず、中の谷の入り江にも展開しています。