作家:冨安 由真
作品名:かげたちのみる夢
公開:2022年
”かげたちのみる夢”は小泉八雲の小説「和解(The Reconciliation)」から着想を得て、築100年ほどの朽ちかけた古民家をまるまる1棟使った没入型インスタレーション作品です。
「和解(The Reconciliation)」は夫婦関係を書いた小説です。
ある男が昔別れた妻を忘れられず、再びよりを戻そうと昔住んでいた家を訪ねます。しかし家は廃墟となっており、男は恐る恐る家の中へと入ります。荒れ果てた部屋をいくつか通過すると奥の部屋に灯りがともっているのに気づき男は喜び入っていくと、そこにはかつての妻がいました。
男は妻との再会を喜び、2人は夜が明けるまで語り明かし、和解して気が付けば眠りについていました。
しかし朝になり目が覚めると、灯りのともっていた部屋はただの荒れ果てた廃屋で、横に寝ていたはずの妻は白骨となっていました。
恐怖に身を震わせながらも男は、外に出て知らぬふりをし妻の住んでいた家へ行く道を訊ねてみた。
すると、訊ねられた人は「あの家にはどなたもいらっしゃいません。元は、数年前に都を去った、ある男の奥様のものでした。ですが男は他の女を迎えるために奥様と離縁されたのです。それが原因となり奥様は、非常に苦しまれて、病気になられました。近くに身寄りもなく、だれも世話をする人がおらず亡くなられたのです」と言った。
”かげたちのみる夢”では自身が「和解」に出てくる男性となり、別れた妻を忘れられず、再びよりを戻そうと昔住んでいた家を訪ねるとそこは廃墟となっており恐る恐る家の中を進んでいく男性の追体験ができるような作品です。
廃屋の中には実在する「物」とそれを描いた「絵画」がいくつか同じ空間にあります。
順路の最後(写真撮影不可)には、その絵画を移し込んだモニターによる「映像」があり、3つの異なる視点を体験することができます。
今まで自分が進んで来た廃屋には複数のカメラが設置されており、中の様子を俯瞰して見ることができます。
自分の後から廃屋に入るゲストの恐る恐る進む姿を見ることがもできる仕掛けです。