犬島について
犬島は岡山県岡山市東区に属する島民50名~60名前後の有人島です。
犬島は観光客の訪れる犬島本島(下記の赤線内)だけでなく、本島を中心とした犬島諸島全体を差す名称です。

犬島諸島の、犬ノ島の小山には高さ3.6メートル、周囲15メートルほどの巨石があり、この巨石がうずくまった犬の形に似ていることが犬島の名前の由来とされています。
この巨石は通称「犬石様」と呼ばれ岡山化学工業株式会社の敷地内にあるため普段は見ることができません。

毎年5月3日に行われる犬石祭の日に限り参拝することができるよ!
犬島の歴史
犬島は離島でありながらも農業や漁業が盛んではなく、鉱業の島として栄えてきました。
犬島は質の良い花崗岩(石の結晶が細かく、配置が均等)の産地として知られ、大きくて立派な花崗岩がよくとれたそうで、犬島でとれた花崗岩は江戸時代頃からお城の石垣や神社の大鳥居などにも使われていました。
明治30年代には大阪港築港により採石の需要がピークに達し、多くの石工職人が犬島に訪れた結果、最盛期では5000人ほどの人々が犬島で生活をしていました。人口の増加に伴い、飲食店や芝居小屋などの娯楽施設が並び笛や太鼓の音が夜な夜な鳴り響く、当時としては都会的な生活や景色が広がっていたそうです。
その後、犬島での採石は島内の石をとりつくしてきたことや、外国産の安価な石が使われるようになったことにより下火傾向となりましたが採石業とかわるかたちで1909年(明治42年)銅の工場が犬島に作られました。
犬島に精錬所が建てられたのは煙害対策や輸送コストの観点(陸より海での輸送コストが圧倒的に安い)などが大きな要因ですが、鉱業の島として栄えてきた犬島だからこその利点もあったそうです。
- 採石が盛んだったころに巨石を運び出していたので港が整備されていた
- 島全体の地盤が花崗岩でしっかりしていている&採石により高い山がほとんどなく土地が平らで工場を建てやすい
- たくさんの石職人が犬島に来ていたので人材の確保がしやすかった



岡山、高松、小豆島などへのアクセスの良さもメリットだね!
その後、第一次大戦の影響により銅の価格が大暴落し精錬所は10年で操業を終えました。
犬島精練所美術館
犬島精練所美術館は犬島に残る銅精錬所の遺構を保存・再生した美術館です。
1909年~1919年の10年間操業した精錬所は2007年に近代化産業遺産に認定、犬島アートプロジェクトがはじまった2008年に美術館として公開されています。
建築家の”三分一博志”は土地の特徴や自然エネルギーを活かした設計を手掛ける建築家で「有るものを活かし、無いものを創る」を実践し犬島精練所美術館を完成させ日本建築学会賞・日本建築大賞(2010)を受賞しています。
犬島精練所美術館は環境に配慮されたつくりで煙突効果などを用いることにより電気を使わずに自然エネルギーだけで館内の換気や温度調整を行っています。
また、犬島精練所に訪れた人々の排泄物等の排水は石や牡蠣の貝殻などでろ過されますが、それでもリンや窒素などの栄養素が含まれており、この排水を海に流してしまうと栄養過多となり赤潮の原因となります。
しかし、このリンや窒素は農業の分野において植物の為に買ってきて与えるほど必要不可欠な栄養です。
三分一博志は「人が訪れるほど、自然が潤う美術館になれば良い」という願いを込め、美術館からでた排水を植物の力を使い浄化するとともに植物の成長に使うつくりとしました。



犬島精練所からの排水はろ過され、犬島精練所にある「みかんの森」の栄養になっているよ!


犬島へのアクセス
犬島へのアクセスは①岡山県宝伝港からと、②直島&豊島からの2通りあります。
①岡山県宝伝港からのアクセスは”あけぼの丸”を利用してください。
あけぼの丸は大人400円/子供200円で乗船することができ乗船時間は約10分です。
宝殿港のすぐ近くには駐車場があり1回500円/1泊2日1,000円で利用することができます。




②直島&豊島からのアクセスは”四国汽船”を利用してください。
直島から豊島(家浦港)を経由し犬島に到着します。
直島⇔犬島からの料金は大人1,880円/子供940円で乗船時間は約55分、
豊島⇔犬島の料金は大人1,250円/子供630円で乗船時間は約30分です。
チケット
犬島精練所美術館のチケットはオンライン購入の場合2,100円、窓口購入の場合は2,300円です。
※15歳以下のお子様は鑑賞料金無料ですがオンライン購入の場合は大人とあわせて子供分の予約が必要です。
※瀬戸内国際芸術祭会期中は(例年通り対象施設に含まれている場合)共通パスポートで入場可能です。



犬島家プロジェクトとの共通チケットなので犬島家プロジェクトも鑑賞できるよ♪
休館日
基本的に火曜日~木曜日(3月1日~11月30日)が休館日です。 ※祝日の場合は開館有り
※閑散期の12月1日~2月末日は全日休館
※瀬戸内国際芸術祭の期間中に限り12月1日~2月末日も開館有
細かく変更があるので詳細は開館カレンダーの確認がおススメです。
鑑賞の所要時間
犬島精錬所美術館の鑑賞時間は1時間ほどが目安になります。
犬島精練所美術館のアート作品
犬島精錬所美術館では柳幸典による「ヒーロー乾電池」と総タイトルのつけられた6点の作品が鑑賞できます。
本作は柳幸典が昭和を代表する小説家、三島由紀夫の残した小説や言葉から題材を得て、三島由紀夫の存在を表して空間を作り上げています。



柳幸典さんの作品は直島のベネッセハウスミュージアムにも「バンザイ・コーナー」が展示されているよ♪
イカロス・セル


画像はハンドブックより引用/犬島精練所美術館内は撮影禁止です。
犬島精錬所館内に入り、はじめに出会う作品「イカロス・セル」。
はじめに燃えさかる太陽の映像が現れ、この太陽を背にして正面に映る光を目指して進んでいきます。
曲がり角ごとにある鏡は先の通路を映すとともに、通り過ぎて振り返ると太陽を映し続けています。
鏡に映る光を目指して進み続けると、そこは行き止まり。空を見上げる窓があり天に開放される構造になっています。
このイカロス・セルは三島由紀夫の著作「太陽と鉄」にもあるギリシャ神話のイカロスを題材とした作品です。
イカロスはギリシャ神話に登場する人物のひとりで閉じ込められた島から逃げる為に蝋で固められた翼によって自由に空を飛ぶことができる能力を得たものの、父親の忠告に反して太陽に近づきすぎたために蝋が溶けて翼が無くなってしまい海に墜落してしまった若者です。





ここの回廊では精錬所跡の煙突の中を通る風の音を録音・増幅した音が聞こえるよ!
ソーラー・ロック


この空間には犬島でとれた約44トンにもなる巨石が置かれています。
巨石の上には水が張られ、真っ黒な半円状の壁と側壁との間から差し込む光が円を描くように映り込みます。
この形が皆既日食の太陽に見えるように計画されつくられています。
宙吊りになっているのは三島由紀夫が暮らしていた三島邸にあった廃材です。
当時、三島由紀夫の暮らしていた部屋と同様に、岩の上に浮かぶ部屋も3畳で構成されています。
スラグ・ノート


ソーラー・ロックの壁面にあるガラス越しにみえる部屋。
これらも先程と同様に三島由紀夫の暮らしていた渋谷区「松濤の家」の廃材を使用しています。
部屋の壁面に沿うように配置された書棚には電球やコンセントプラグなどの電気部品などが並べられています。
この神棚のように置かれた書棚の中には、そこに祀られているかのように作品の総タイトルでもある「ヒーロー乾電池」と印刷された箱型の乾電池があります。これは三島家の玄関呼び鈴の電源に使われていた電池です。
この空間はガラス越しからの鑑賞のみで中に立ち入ることはできませんが、床にはスラグという黒い砂のようなものが敷き詰められ、その上に鉄製の文字が散らばっています。
イカロス・タワー


この空間は犬島精練所美術館の煙突の下に位置し、ガラス張りにすることでサンルームのように太陽光を取り込みます。
太陽光によって煙突の根本を温めて、煙突効果の後押しができるつくりとなっています。
扉や窓の吊るされている空間の床にはスラグで波紋が描かれていおり、この波紋はイカロスの落ちた海を表現しています。
ミラー・ノート


ミラー・ノートでは三島邸の1階にあったとされる六畳間の襖が使われています。
襖を開けると鏡が現れ、そこに赤い文字が投影されていきます。
向かい合わせに配置された鏡は合わせ鏡となり、赤い文字は部屋中を埋め尽くしていきます。
この部屋は風除室であると同時に死者との交感の空間とされています。
ソーラー・ノート


同じく三島邸にあった廃材(柱、梁、障子戸)から作られた空間の中央に三島邸にあった旅行鞄が置かれています。
作家の柳さんは本作についてパンドラという言葉を用いてお話をされたことがあるそうです。



梁から吊るされる鉄製の文字にはどんなメッセージがあるのかな?
犬島チケットセンターストア


犬島港すぐの犬島チケットセンターでは犬島精練所美術館と犬島家プロジェクトの共通チケットを購入できます。
チケットの他にもTシャツやトートバッグ、犬島や瀬戸内国際芸術祭に関する書籍、ハンドブッグなどたくさんのお土産があります。
コインロッカーもあり100円硬貨で利用可能、使用後は100円硬貨も返却されます。



100円硬貨の取り忘れに注意してね!


犬島チケットセンターカフェ


犬島チケットセンターに併設されているカフェです。
パンやおむすびなどのモーニングメニュー、そうめんや鯛めしなどのランチメニュー、デザートなどメニューも豊富です。
犬島港のすぐ近くなのでフェリーの待ち時間に利用するのもおススメです♪






関連情報
犬島精練所美術館とチケットが共通になっている犬島家プロジェクトの紹介記事もありますので、是非ご覧ください!


犬島に宿泊を考えている方はこちらもおススメです!

